【サイン禁止?】PINバイパス廃止の意味・背景・影響を解説

決済端末の導入

はじめに|PINバイパスとは?

PIN設定とはカードの利用を保護するために設定する暗証番号のこと指します。

このPIN設定を「スキップしてサイン決済に切り替える機能」をPINバイパスと呼びます。

サイン決済の時代が終わる?

2025年4月からこの“PINバイパス”の利用が原則廃止されました。

従来、日本国内では「ICチップ付きのクレジットカード」であっても、サインによる本人確認が許容されてきましたが、セキュリティ上の懸念や不正利用の増加を受け、業界ガイドラインが改訂された形です。

ここで勘違いしがちなのが、この施策は「スキップしてサイン決済で完了することができる機能」が廃止になっただけなので、
タッチ決済時の上限超えの場合のサインや外国発行のパスワード設定がされていないカードのサイン決済は今ままで通り有効です。

この施策により、多くの店舗で「今まで通りの運用ができない」という変化が生じており、決済端末の見直しやオペレーション変更を迫られている事業者も少なくありません。

NG例

・お客様のカードを預かり、店舗側がサインをして決済を完了させる。
・暗証番号を忘れてしまったからしょうがなくサイン決済で済ませる。

上記のようなサイン運用や暗証番号スキップを伴う対応は、今後は原則として運用できなくなります。

ただし、2025年8月現在でも一部の決済端末では、暗証番号のスキップ(PINバイパス)機能が残っているケースも存在します。特に、一部メーカー(Panasonic製など)や古い端末では、設定変更をしていない限り機能が残っている可能性があります。

一方で、決済代行会社が提供する端末(Airペイ、楽天ペイ、STORESなど)では、PINバイパス機能が完全に廃止されており、これまでのようなサイン対応を前提とした会計オペレーションは見直しを余儀なくされています。

店舗側としては、自社で使用している端末の仕様を今一度確認し、「現在は使える」ではなく「今後は使えなくなる」ことを前提に対応策を整える必要があります。

PINバイパスはなぜ廃止された?

廃止の理由は、不正利用の増加です。

PINの入力がなければ「本人確認があいまい」になり、店舗・カード会社・利用者の全てがリスクを抱える構造でした。

セキュリティ向上の観点から、PINバイパスは「例外措置から外される」こととなりました。

どんな店舗に影響が出るのか?

特に影響が大きいのは、次のような業態です

  • 飲食店:テーブル会計を行っており、スタッフが端末を持ち歩くことが難しいケース
  • 美容室・サロン:レジ台が固定されており、お客様が移動することに抵抗があるケース
  • 高齢者利用の多い施設:暗証番号の入力が困難なユーザーも多く、丁寧な説明が求められる

これまで「サインで済ませていた」店舗ほど、運用フローの見直しが必要です。

店舗が取るべき3つの対策

PINバイパス廃止による影響が予想される店舗では以下のような対策が有効です。

① タッチ決済の導入を進める

タッチ決済で一定金額未満(15,000円)の支払いならPIN入力が不要なケースもあります。

タッチ決済に対応した端末であれば、ストレスなく本人確認が可能です。

タッチ決済で15,000円を超えてしまった場合は、サインに切り替わります。(端末やクレジットカードによっては決済不可の可能性あり)
この場合は暗証番号スキップ機能ではないのでサインは有効となります。

② モバイル決済端末の導入で会計を柔軟に

従来の据え置き型端末ではなく、持ち運び可能な決済端末を導入すれば、暗証番号入力のためにお客様が移動する必要がなくなります。

また決済端末が不要でiPhoneやAndroidにアプリを入れるだけで決済端末にできるシステムもあります。
下の記事からチェックしてみてください。

③ スタッフ・お客様への周知徹底

「暗証番号が必須になりました」と掲示・案内することで、トラブルやクレームを防止できます。
POS画面の横に説明カードを置くなども効果的です。

各決済サービスの対応状況

PINバイパスについて決済代行各社の対応をまとめました。

Square(スクエア)

  • 2025年2月時点でPINバイパス機能を廃止済み
  • Tap to Payやタッチ決済への移行を積極推進
  • スマホで完結する決済方法により、PIN対応のハードルが低いのが強み

楽天ペイ

  • 2025年3月末でPINバイパス機能を終了
  • タッチ決済やIC対応を全面化
  • 高機能な「楽天ペイ ターミナル」利用を推奨

AirPay(エアペイ)

  • 国際ブランドの基準に従い、PIN入力を標準に
  • iPad+カードリーダー端末でも対応可能
  • 設置場所の工夫でオペレーション簡素化を提案

STORES決済 / PAYGATE / 他

  • 各社ともガイドラインに準じ、PIN優先運用へシフト中
  • 一部の簡易リーダーでは「タッチ決済+電子レシート」に注力中

外国人観光客への影響は?|パスワード設定なしクレジットカード

外国人観光客が多いエリアの店舗にとって、今回のPINバイパス廃止による観光客への影響を気にされている方も多いのではないでしょうか。

実際、アメリカなど海外で発行されたクレジットカードの中には、そもそも暗証番号(PIN)が設定されていないものも存在します。

しかし今回のルール変更は、「暗証番号をスキップして任意でサイン決済に切り替える」ことを国内発行カードを含めて廃止するものであり、もともとパスワードが設定されていないカードについては、従来どおりサインでの決済が有効とされています。

つまり、観光客のカードに暗証番号が設定されていない場合は、例外的にサイン決済での対応が可能です。ただしこの場合も、レジ側で「PIN未対応カード」であることをシステム上判別した上で、正しく運用することが重要です。

決済端末によって異なるので、詳細については導入されている決済代行会社へ問い合わせてみるのが正確です。

まとめ|“本人確認の厳格化”にどう備えるか?

PINバイパス廃止は、「より安全なキャッシュレス社会」のために必要な転換点です。

とはいえ、店舗側の負担や現場オペレーションに影響が出るのも事実。
今後は「タッチ決済」「モバイル決済端末」「説明の工夫」が鍵を握ります。